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◆ 08:19日目/艦内巡行 #2



■ 潜水艦UX 二階 - 艦首付近 - ■


「そっちの通路、配線直してるからまだ時間がかかるみたいだ。……どうする? 部屋の中突っ切るか?」
「ん……、さすがに作戦室は通すわけにいかないだろ」

 一階の艦首までの案内が終わり、あゆみは二階へと連れて来られていた。
 しかし、いくらか進んだところで男達は立ち止まった。
 目の前の通路が修復作業のために通行止めになっていたのだ。

「一旦一階に戻る?」
「それも面倒だなぁ……」

 外された壁の板金。引き出された配線や基板。
 床を占領しているそれらを見下ろしながら男達はぼそぼそと話をする。
 そして何やら頷き合い、あゆみのほうへと顔を向けた。

「悪いな、あゆちゃん。この先の通路、今作業してて通れないんだ」
「横の部屋の中を通れば向こうへ抜けられるんだけど、部屋の中にはあゆちゃんといえどもちょっと見せられないものがあってな」
「……そういうわけで、少しの間我慢してくれよ――」

 何を我慢するのか――と小首をかしげたあゆみに、男の一人が歩み寄る。
 彼の手にはタオル。それが顔に近づけられたかと思うと――、

「――っ? ぁ……っ!?」

 唐突に、目が覆われた。

「――ちょっ! ちょっと――、な……、なに……ッ!?」

 頭の後ろできゅっと縛られるタオル。
 いきなりのことに嫌がる暇もないまま、あゆみは目隠しをされてしまっていた。

「やッ――、やだッ! 取ってよっ!!」

「部屋の中を通り過ぎるまでだから」
「大丈夫だって。ゆっくり歩いてやるからさ」

「や! やめてよっ! 見えないってばぁッ!!」

 ただでさえ枷や首輪をつけられていて動きを制限されている。
 その上視界まで奪われ、あゆみは不安になって声を荒げた。

「この先の部屋の中は見せて良いかどうか、俺達じゃ判断出来ねぇんだって」
「通り過ぎるまで一分もしないから。それともこの辺りの案内は飛ばして一階に戻るか?」

 ただ男達は無理強いのようなことはしてこなかった。
 判断を委ねるように聞いてくる。

(――――っ……)

 あゆみは動きを止めた。
 この機会に出来る限り多くの場所に行ってみたい気持ちは強い。
 特に出入り口に近いこの二階はよく見ておきたい場所だ。
 男達の声はいつものようなふざけ半分のものではないようにも思えるし、目隠しをしてきた理由も嘘ではない様子。
 ならば仕方が無いだろうか――と、あゆみは肩の力を抜いた。

「……いいのか? じゃ行くぞ?」
「足元気を付けろよ」

 枷の綱が軽く引かれる。
 目が見えない不安の中、男達の先導に従って、あゆみは滑らすようにそっと足を前に出した。






■ 潜水艦UX 二階 - 作戦室 - ■


「入るところ、段差になってるから。……そう、そこ」

 部屋の扉を押さえながら男が注意を促す。
 あゆみは足枷から伸びている鎖を気にしながら、おずおずと部屋の中へ足を踏み入れた。
 すると――、

「お、やっと来たな!」
「はははっ、本当にそんな格好させて連れ回してるんかよ」
「あゆちゃん、いらっしゃいー」

 部屋の中からは一斉に声が上がった。

「何だよ。驚かせようと思ったのに、もう知ってたのか」
「へへっ、下から話が回ってきたからな」

 作戦室には五名の男達がいた。
 皆仕事の手を止めると、来訪者を歓迎するように笑顔を見せる。
 艦内の散歩が行われていることはもう一階の者達から伝わっており、この部屋の男達に説明は不要だった。

「あれ、あゆちゃん目はどうしたんだ?」
「ああ。この中にある物は見せないほうが良いかと思って一応目隠しを」
「作戦室には入れちゃ不味いかなと思ったんだけどさ、外の通路、今直してる最中だろ? 向こうも邪魔するわけにもいかないし」
「こっちは別に構わねえよ。むしろ通り過ぎようとするほうが酷い話だって! みんな楽しみに待ってたんだからさ!」

 壁一面に設置されたモニターや計器類。
 部屋の真ん中に備え付けられたテーブルと、その盤面に緑色の光で映し出されている海図。
 UXの作戦室である。
 普段は緊張感に包まれていることの多いこの部屋だったが、今は艦長のアーサーはもちろん副艦長もいない。朝の戦闘のデータ解析も一段落したためだろう、いささかたるんだ空気が漂っていた。



(……うぅ……)

 また手枷が引かれ、あゆみは小さく足を前に出した。
 目隠しは外されておらず、いまだ真っ暗な闇の中である。
 自分からは動きようが無いので、手枷に繋がっている綱の指示に従うしかない。

(……何人……いる……の?)

 

 周囲からは、自分を連れ回している男達以外の声がしている。一人のものではない強い視線を感じる。
 複数の男達がいることだけは分かるのだが、それが何人いて何をしているのかまでは分からなかった。

「艦の中、全部見せて回ってるのか?」
「いや、主な所だけ。いつも結構自由にさせちまってるしさ、危ない場所を教えておくのも悪くないかと思って」
「ははっ、でもそれが一番の目的じゃねえだろ?」
「パンツくらいはかせてやれよ。くくくッ……」

 四方から響く男達の声。
 その幾つもの声が、視界を奪われているあゆみにはやけに鮮明に聞こえてきた。
 頭の中に男達が入り込んで直接会話をしているかのような気持ち悪さに、あゆみは顔を歪める。

(……う…………)

 周囲を見ることが許されない自分。
 なのに男達は、丸裸に近い無防備な自分の姿を見ることが出来る。
 そんな一方的な状況に少し気持ちがすくんでしまい、あゆみは身を縮こまらせた。



「へへっ……、あゆちゃんが遊びに来てくれるとやる気出るなぁ――」

 そんなあゆみの耳のすぐ近く。突然、野太い男の声がした。
 そして次の瞬間――、

「――――っ……ひゃッ!」

 あゆみの肩から脇腹のあたりにかけて、ざらついた手がいやらしく滑り降りた。

「――ッ! ちょっ……!!」

 いきなりの接触にビクンと身体を震わせたあゆみは、慌てて手が伸びてきた方向に身体をひねった。
 けれど、もうその先に人の気配は無い。

「こんな格好されると、別のやる気が出てきちまいそうだけどな――」

 後ろから別の男の声――。

「―― ひぅッ!」

 今度は肉付きの薄い締まった臀部に、大きな手の平が貼り付く。
 あゆみがまた体をひねると、逃げるようにその手は引っ込んだ。

「や―――……ッ! やめてよっ!!」

 何の前触れもない接触。いつもの不快さだけでなく嫌な驚きまでも与えられたあゆみは、怒りを露わにして叫んだ。

「えー、何を?」
「くくっ……」

 だが返ってきた答えは、まるで何事も起きていないかのようなとぼけた声。
 続いて部屋の中にはクスクスと幾つかの小さな笑いが湧き上がる。

「ううっッ……」

 あゆみは今悪戯をしてきた男に向かって文句を言おうとした。
 だが、その対象がどこにいるのか定かではない。
 身構えるにしても、どちらを向けばいいのか分からない。
 あゆみは頭を左右に何度も振りながら周囲を警戒する。

「お触りは禁止?」
「いや、別にそんなことはないけどな。でも本当にそういうつもりじゃなくて、ちゃんと艦内の案内もしてきたんだぜ」
 
 あゆみを連れてきた男達は肩をすくめて苦笑いをする。

「なあ、あゆちゃん。どうだった? そんな格好でここまで歩いて来てさぁ」
「注目浴びちゃっただろ」
「恥ずかしかったか? くくっ……」

 部屋の男達はねっとりとした声で問いかける。
 五人の男達はもう全員席を立っており、あゆみのそばへとにじり寄って来ていた。



「…………や――――……、やだ…………」

 前後左右から聞こえるいやらしい声と男達の気配が、いっそう近づいてくるのを感じたあゆみ。
 だがどちらにも動くことが出来ない。

「……うへへ。やっぱ、綺麗な肌してるよなぁ」

「――はぅっ!」

 笑い声を含んだ男の声が耳に届くのと同時にまた皮膚に冷たい指先が触れ、あゆみは跳ねるように体を弓なりにさせた。

「やっ……、やめてよバカぁッ! さわらないでよッ!!」

 一歩横に逃げ、強い口調で言う。
 だがそんな要求は通るわけもなく、逆にさらに多くの手があゆみの裸体に伸び始める。

「へへ……。こんな格好されて、ちょっかい出すなってのが無理だっつーの!」

「あっ……! や……ッ――ひ……ぅっ!!」

「『悪戯してください』って言ってるようなもんだしなァ」

「……んぅ、っ! ――あ……ぁぅッ!!」

 男達はあゆみに抱きついたり掴みかかったりというような真似はしてこなかった。
 皆、軽く触ってはすぐに退く。

「や! やめてってばぁッ! っ……ぁんッ! あ――、あっち行ってよぉッ!!」

 あゆみは枷で繋がった両手を必死に振って男達を撃退しようとする。
 けれど素早く避ける彼らを前に、その攻撃は全て空振りに終わるだけ。
 ジャラジャラと鎖の音がむなしく響くだけだった。

「くくっ……。そらっ!」

「ひ――――……ひゃぅッ!!」

「うへへ……、この出っ張りのない体型がたまらねぇよ」

「やだっ、あ……ぅ――っ、あ……ぁん!!」

 男達はさらに調子に乗って、それぞれにあゆみの身体を触りまくる。
 あゆみは何とか防御しようと待ち構えるのだが、男達はそんな彼女の動作を見てから、全く別の無防備な場所を責めてくる。
 目が見える大勢と目隠しされた一人とでは勝負になどならない。

(……うう……っ…………!)

 暗闇の中。
 次はどこに男達の手が来るのか分からず、接触に対する心構えさえさせて貰えない。

(はぁ……、はぁ……、や……やめてよぅ…………)

 心臓はトクトクと大きな音を立て始める。

「――ひ……ァぁッ!」

「柔らけーな、あゆちゃんは。ひひひ……」

 今度は後ろから伸びた手が、あゆみの両胸を思いっきり鷲づかみにした。

「やっ! いやぁ……ッ――!」

「ほら、どうした。こっちだぜ?」

「――きゃっ!」

 あゆみが脇を固く閉じて胸に触れる手から逃れようとすれば、別の男達が隙だらけになっている太ももを撫で回す。

「ちょっ……! もうっ!」

「――くくっ、先っちょ少し勃ってきてるじゃん」

「――――ぁ……うっ!!」

 下半身に触れる手を追い払おうとすれば、次はまた上だ。
 無骨な指が、硬くなり始めている胸の突起を弾いて逃げていった。

「も――っ、もうッ! やめ――――」

「うへへ、感じてきちゃったのかな? ……こっちはどうだ?」

「っあ……ッ―――! はう……ぅッ!!」

 そして必死で腕を振り回すあゆみを嘲笑するかのように、またもや別の男の手が下の方へと伸び、未熟な性器のスリットをいやらしくなぞる。

「っ――――……! うぅっ! さわらないでってばァっ!!」

 

 男達の酷い悪ふざけに我慢できなくなったあゆみは、周りの男達を追い払うように大きな声を上げた。
 そしてせめて視力だけでも取り戻そうと、懸命に腕を顔に引き寄せて、目隠しを外そうとした。

「おおっと。それはダメだぜ!」

 だが手枷に繋がった綱を持った男は、そうはさせじと綱を引っ張る。

「っ! ……ううッ!」

 目一杯力を込めても男には敵わず、あゆみの腕はまた前へと持って行かれてしまう。
 ならば何とか早くこの部屋を抜け出そうと、あゆみは男の力に逆らわずに今度は強引に前に進もうとした。

「急ぐと危ないぜ? ゆっくり歩けって。くくっ……」

 けれどその行動も許されない。
 あゆみの後ろにいた首輪の綱を持った男が、腕に力を込めて彼女を制する。

「あ゛――、う゛ぅッ!」

 ピンッと張り詰める頑丈な綱。
 後方に強く首輪を引かれ喉を絞められる形になったあゆみは、呻き声を上げて足を止めざるを得なかった。

「……っ! げほっ……ッ! も――……もういやッ! やめてってばァっ!!」

 好き勝手にされていることが悔しくて、癇癪を起こしたように嫌がるあゆみ。
 それでも男達は彼女を弄ぶのを止めはしない。
 皆、いやらしい笑い声を漏らしながらあゆみに手を伸ばす。

「俺、今夜やっと順番来るんだよ。へへっ……夜はよろしくな、あゆちゃん。三日間溜め込んだ精液、ここにいっぱい注ぎ込んでやるからな!」

「んッ! っ――――ぁ、……あ、あぅッ!!」

 作戦室には今晩ちょうど順番が回ってくる男達がいた。
 発情したような吐息を漏らしながら、男はあゆみの柔らかい下腹部の辺りをまさぐる。

「俺もだぜ。ちゃんと体綺麗にしとけよ!」

「はぁ、はぁ……、――ひゃぅッ!!」

 お腹を触られて身体をくの字にしたあゆみのお尻を、同じく順番が来る男が両手で鷲づかみにする。

「やっ……! ううっ……、もうッ!!」

 視界を奪われたあゆみの前後左右から降りかかる低音の効いた男達の声。
 予期せぬ所から襲ってくる、幾つものいやらしい手。

「は……ぅっ――、あぁ……んッ! や――……ッ! もうさわらないでってばァ!!」

 いくら体をくねらせても逃れられない。
 手枷と足枷と首輪があゆみを自由にさせてくれない。
 執拗に続けられる男達の襲撃に、あゆみはただただ翻弄されるだけだった。



   ◇



「――ほら、出口だぜ」

 綱を持った男が言う。
 作戦室の男達がちょっかいを出す中を少しずつ前に進んできたあゆみは、やっとのことで入ってきた場所とは反対側にある扉の前に辿り着いていた。

「えー、もう行っちまうのかよ」
「もっとゆっくりしていけばいいのに。……ま、しょうがねーか。俺達もまだ解析残ってるしな」

 作戦室の男達は不満げな声を漏らす。
 だが彼らも今はこれ以上のことをする暇はなかった。

「仕事に戻るか」
「じゃあな、あゆちゃん。お散歩頑張りな」

 あゆみの鼓膜を耳元で揺らしていた野太い声は、すっと部屋の奥へと遠ざかって行く。
 粘着的な悪戯をしていた部屋の男達だったが、引く時はあっさりとしたものだった。

「っ――……、はぁ……、はぁ…………」

「また足元に段差あるから気を付けろよ」

 軽く綱が引かれる。
 突然のスコールのような愛撫に見舞われたあゆみは、案内の男の声をどこか遠くに聞きながら、言われるままに足を前に出した。






■ 潜水艦UX 二階 - 通路 - ■


「もういいぞ」

「……ぁ――――」

 外される目隠し。
 あゆみの目に、蛍光灯の白い光が飛び込んでくる。

「……ん……ぅっ――――」

 眩しげに目を細めるあゆみ。
 その瞳は浮かんだ涙で薄っすらと潤んでおり、

「――っ、……はぁ……、は……ぁ…………」

 そして頬は、先程までよりもずっと赤く火照っていた。

「ん? やけに顔赤いな」
「なんだよ。悪戯されて感じちゃったのか?」

「……っ!? そ――……っ! そんなこと、あるわけないでしょっ!」

 あゆみはハッとし、眉をつり上げながら反論する。

 けれど。
 その胸の先端が軽く隆起しているのは、衣服を身に着けていないゆえの肌の冷えだけが理由ではなかった。
 身体の芯に湧き上がった熱感は、男達から逃れようとして暴れたことだけが原因ではなかった。






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